複数社からRSUをもらった場合の確定申告
はじめに
転職や副業により、複数の企業からRSUを受け取る場合があります。この場合、確定申告が必要となることがほとんどです。本記事では、複数社からRSUを受け取る場合の確定申告方法を、必要書類から記入例まで詳しく解説します。
複数社からRSUを受け取るケース
典型的なパターン
複数社からRSUを受け取る主なパターン:
| パターン | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 転職年 | 前職と現職の両方でRSU権利確定 | 3月に転職、両社でVesting |
| 副業 | 本業と副業でRSUを受け取る | 正社員+顧問契約 |
| 退職後 | 退職後も前職のRSUが権利確定 | 退職後の継続Vesting |
課税の原則
複数社から受け取るRSUは、それぞれ「給与所得」として課税されます。
重要:
- 各社が独立して源泉徴収を行う
- 合算した所得に対する税額と、各社の徴収額に差異が生じる
- 差異は確定申告で調整
確定申告が必要な理由
源泉徴収の問題
複数勤務先がある場合、それぞれの企業が「単独の給与」として源泉徴収を行うため、税率が低く計算されます。
具体例:
【企業Aの計算】
年間給与(見込み):5,000,000円
RSU権利確定:1,000,000円
合計:6,000,000円
源泉徴収率:約10%
【企業Bの計算】
年間給与(見込み):4,000,000円
RSU権利確定:1,000,000円
合計:5,000,000円
源泉徴収率:約8%
【実際の合計】
給与:9,000,000円
RSU:2,000,000円
合計:11,000,000円
正しい税率:約18%
→ 源泉徴収不足が発生
確定申告の義務
以下の場合は確定申告が義務付けられています:
- 2箇所以上から給与を受け取る場合
- 原則として確定申告が必要
- 副所得が20万円以下であれば不要(RSUは給与所得なので対象外)
- 給与所得控除後の金額が2,000万円を超える場合
- 確定申告しないと損をする場合
- 還付が受けられる場合
- 控除を受けたい場合
確定申告の手順
必要書類の収集
以下の書類を準備します:
各社共通:
- [ ] 源泉徴収票(各社から翌年1月頃に発行)
- [ ] RSU権利確定明細書
- [ ] 給与明細(年末調整後のもの)
売却がある場合:
- [ ] 証券会社の年間取引報告書
- [ ] 外国税額控除に関する書類(米国株の場合)
申告書の記入手順
ステップ1:所得の集計
【給与所得の計算】
企業A:
- 現金給与:○○○万円
- RSU権利確定分:△△△万円
- 小計:□□□万円
企業B:
- 現金給与:○○○万円
- RSU権利確定分:△△△万円
- 小計:□□□万円
合計給与所得:▲▲▲万円
ステップ2:税額の計算
合計給与所得:12,000,000円
給与所得控除:-1,950,000円
所得金額:10,050,000円
各種控除:-1,000,000円
課税標準:9,050,000円
所得税額(計算式):9,050,000円 × 33% - 1,536,000円 = 1,450,500円
ステップ3:源泉徴収額の集計
企業Aの源泉徴収額:△△△円
企業Bの源泉徴収額:△△△円
合計源泉徴収額:□□□円
ステップ4:納税額または還付額の計算
算出税額:1,450,500円
源泉徴収額:1,200,000円
差額(納税):250,500円
記入例:実際のケース
ケース1:転職年の確定申告
状況:
- 前職(1月〜6月):給与300万円、RSU権利確定100万円
- 現職(7月〜12月):給与400万円、RSU権利確定100万円
申告書記入例:
【第一表】
収入金額等の内訳:
㋐給与所得:
企業A(前職):4,000,000円
企業B(現職):5,000,000円
合計:9,000,000円
【第二表】
所得税の計算:
給与所得:9,000,000円
給与所得控除後:7,050,000円
課税所得金額:6,050,000円
算出税額:777,500円
源泉徴収税額:
企業A:400,000円
企業B:500,000円
合計:900,000円
差額(還付):122,500円
ケース2:外国企業を含む場合
状況:
- 日本企業:給与500万円、RSU権利確定100万円
- 米国企業(副業):RSU権利確定200万円(米国で30%源泉徴収)
特別な対応:
- 外国税額控除の計算
`
米国源泉税:2,000,000円 × 30% = 600,000円
(ドル換算後の金額で計算)
`
- 日本での課税
`
合計給与所得:8,000,000円
日本の所得税(概算):800,000円
外国税額控除上限:600,000円 × (800,000円/800,000円) = 600,000円
→ 全額控除可能
`
よくあるミスと対策
ミス1:RSUの重複申告
問題: 現物のRSUと売却益を両方申告して二重課税に
対策:
- RSU権利確定分は「給与所得」
- 売却益は「譲渡所得」
- それぞれ別の欄に記入
ミス2:外国税額控除の忘れ
問題: 米国株RSUの米国源泉税を忘れて二重課税
対策:
- Form 1042-S等の保管
- 確定申告書に外国税額控除を記入
ミス3:証券会社の選択ミス
問題: 特定口座と一般口座の取引を混同
対策:
- 年間取引報告書で口座タイプを確認
- 特定口座(源泉徴収あり)は別枠で処理
まとめ
複数社からRSUを受け取る場合の確定申告:
| 項目 | 内容 |
| 申告の必要性 | 原則として必要 |
| 主な理由 | 源泉徴収不足の調整 |
| 必要書類 | 各社の源泉徴収票・RSU明細書 |
| 記入方法 | 給与所得として合算 |
| 外国企業 | 外国税額控除を活用 |
重要なポイント:
- 複数勤務は確定申告が必要な場合が多い
- 源泉徴収不足が発生する可能性
- 各社の書類を確実に保管
- 期限内(3月15日)に申告
複雑な場合は税理士に相談することをおすすめします。