RSU 複数証券会社 確定申告のまとめ方
「RSUがE*TradeとMorgan Stanleyの両方にある…確定申告どうまとめるの?」
転職や会社の証券会社変更などで、RSUを複数の証券会社で管理している方は少なくありません。複数社の書類を集めて、確定申告にまとめる方法がわからず困っていませんか?
本記事では、複数証券会社のRSUを持つ方のための、確定申告のまとめ方を解説します。
この記事のポイント
- 複数社の書類を効率的に集める方法
- 譲渡所得の跨ぎ売却と計算方法
- 外国税額控除の集計方法
- Excelでの管理テンプレート紹介
はじめに
この記事は誰向けか
- 2社以上の証券会社でRSUを管理している方
- 転職により証券会社が変わった方
- 複数社の書類をまとめる方法が知りたい方
- 跨ぎ売却(別会社で取得・売却)の計算が複雑な方
複数証券会社が発生するケース
| ケース | 具体例 |
|---|---|
| 転職 | 前職E*Trade、現職Morgan Stanley |
| 会社変更 | 会社が証券会社を変更(E*Trade→Fidelity) |
| 複数勤務 | 副業先でもRSUを受け取る |
| 退職後 | 退職後も前職のRSUを保有 |
複数証券会社の書類管理
各証券会社の書類一覧
社A(例:E*Trade)
| 書類名 | 用途 | 確認ポイント |
| Form 1042-S | 外国税額控除 | Box 7aの金額 |
| Form 1099-B | 譲渡所得 | 売却記録の有無 |
| Vesting明細 | 給与所得確認 | 権利確定株数・株価 |
| 売却明細 | 譲渡所得計算 | 売却日・株数・金額 |
社B(例:Morgan Stanley)
| 書類名 | 用途 | 確認ポイント |
| Form 1042-S | 外国税額控除 | Box 7aの金額 |
| Form 1099-B | 譲渡所得 | 売却記録の有無 |
| Award History | 給与所得確認 | 権利確定記録 |
| Trade Confirmation | 譲渡所得計算 | 売却詳細 |
書類収集の管理表
【複数証券会社書類管理表】
| 証券会社 | Form 1042-S | Form 1099-B | Vesting明細 | 売却明細 | 備考 |
|----------|-------------|-------------|-------------|----------|------|
| E*Trade | [ ] | [ ] | [ ] | [ ] | 前職分 |
| Morgan Stanley | [ ] | [ ] | [ ] | [ ] | 現職分 |
| Fidelity | [ ] | [ ] | [ ] | [ ] | 副業分 |
給与所得のまとめ方
給与所得の集計
複数の証券会社で権利確定があった場合、合算して給与所得として申告します。
計算例:
【社A: E*Trade】
権利確定株数: 30株
株価: $150
TTMレート: 145円
給与所得A = 30 × 150 × 145 = 652,500円
【社B: Morgan Stanley】
権利確定株数: 50株
株価: $155
TTMレート: 148円
給与所得B = 50 × 155 × 148 = 1,147,000円
【合計給与所得】
652,500円 + 1,147,000円 = 1,799,500円
e-Taxでの入力方法
方法1: 一つの支払者として入力(推奨)
| 入力項目 | 内容 |
| 支払者名 | 「〇〇会社(RSU総額)」など |
| 支払金額 | 全証券会社のRSU給与合計 |
| 備考欄 | 各社内訳を記載 |
方法2: 支払者を分けて入力
| 入力項目 | 内容 |
| 支払者A | 社Aの会社名と給与額 |
| 支払者B | 社Bの会社名と給与額 |
※どちらの方法でも税額計算上は同じ結果になります。
譲渡所得のまとめ方
跨ぎ売却の問題
跨ぎ売却とは、A社で取得したRSUをB社で売却することです。
【跨ぎ売却の例】
取得: E*Tradeで50株を権利確定(取得単価: $150 × 145円)
移管: Morgan Stanleyに移管
売却: Morgan Stanleyで30株を売却
→ 取得費はE*Trade時のデータが必要
FIFO方式と証券会社の跨ぎ
日本の税法では、株式の譲渡所得はFIFO方式(先入れ先出し法)が原則です。
| 順序 | 取得日 | 証券会社 | 株数 | 取得単価 |
| 1 | 2024/3/15 | E*Trade | 50株 | $150×145円 |
| 2 | 2024/6/20 | Morgan Stanley | 30株 | $160×148円 |
| 3 | 2024/9/10 | E*Trade | 20株 | $155×147円 |
売却時の計算(FIFO方式):
売却: 60株を売却($200 × 150円で売却)
売却金額 = 60 × 200 × 150 = 1,800,000円
取得費(FIFO方式):
- 1番目の50株(E*Trade): 50 × 150 × 145 = 1,087,500円
- 2番目の10株(Morgan Stanley): 10 × 160 × 148 = 236,800円
取得費合計 = 1,324,300円
譲渡所得 = 1,800,000 - 1,324,300 = 475,700円
譲渡所得の集計表
【複数社譲渡所得集計表】
| 売却証券会社 | 売却日 | 株数 | 売却金額 | 取得証券会社 | 取得費 | 譲渡所得 |
|--------------|--------|------|----------|--------------|--------|----------|
| E*Trade | 2025/3/15 | 30 | 690,000円 | E*Trade | 652,500円 | 37,500円 |
| Morgan Stanley | 2025/6/20 | 20 | 480,000円 | E*Trade | 435,000円 | 45,000円 |
| Morgan Stanley | 2025/6/20 | 10 | 240,000円 | Morgan Stanley | 236,800円 | 3,200円 |
| **合計** | | **60** | **1,410,000円** | | **1,324,300円** | **85,700円** |
e-Taxでの譲渡所得入力
複数社で売却があった場合、売却ごとに分けて入力します。
| 入力 | 銘柄名 | 売却日 | 株数 | 売却価額 | 取得価額 |
| 1 | AAPL(E*Trade) | 2025/3/15 | 30 | 690,000円 | 652,500円 |
| 2 | AAPL(E*Trade取得→MS売却) | 2025/6/20 | 20 | 480,000円 | 435,000円 |
| 3 | AAPL(Morgan Stanley) | 2025/6/20 | 10 | 240,000円 | 236,800円 |
外国税額控除のまとめ方
Form 1042-Sの集計
複数社からForm 1042-Sが発行される場合、合算して外国税額控除の対象とします。
集計例:
【社A: E*Trade】
Box 7a: $500
TTMレート: 150円
源泉徴収税額A = 500 × 150 = 75,000円
【社B: Morgan Stanley】
Box 7a: $800
TTMレート: 150円
源泉徴収税額B = 800 × 150 = 120,000円
【合計外国税額控除額】
75,000円 + 120,000円 = 195,000円
e-Taxでの入力方法
| 入力項目 | 内容 |
| 国名 | アメリカ合衆国 |
| 外国所得税額 | 全社の合計額(195,000円) |
| 備考欄 | 各社内訳を記載 |
注意点:証券会社ごとの上限計算
理論的には各社ごとに外国税額控除の上限を計算すべきですが、実務上は合計所得に対する上限を計算し、合計外国税額がその上限を超えないか確認します。
【上限計算】
日本での課税額: 500,000円
国外所得合計: 2,000,000円
全世界所得: 10,000,000円
外国税額控除上限 = 500,000 × (2,000,000 ÷ 10,000,000) = 100,000円
実際の外国税額: 195,000円
→ 上限100,000円まで控除可能、残り95,000円は繰越
複数社管理のためのExcelテンプレート
管理シート構成
【複数社RSU管理ブック】
シート1: 権利確定履歴
| 日付 | 証券会社 | 株数 | 株価(USD) | レート | 円換算 | 累計株数 |
シート2: 売却履歴
| 売却日 | 売却証券会社 | 株数 | 売却価額 | 取得証券会社 | 取得費 | 譲渡所得 |
シート3: 外国税額控除
| 証券会社 | Form1042-S | Box7a(USD) | レート | 円換算 | 備考 |
シート4: 残高管理
| 証券会社 | 取得累計 | 売却累計 | 残株数 | 平均取得単価 |
Excel関数の活用例
FIFO方式で取得費を自動計算:
=SUMIFS(取得費範囲, 取得日範囲, "<="&売却日, 残フラグ, ">0")
複数社の合計計算:
=SUMIF(証券会社範囲, "E*Trade", 金額範囲) + SUMIF(証券会社範囲, "Morgan Stanley", 金額範囲)
よくある質問(FAQ)
Q1: 証券会社間の移管費用は必要経費になる?
A: 証券会社間の移管にかかる費用は、譲渡所得の必要経費として認められる可能性があります。ただし、証券会社により費用が発生しない場合もあります。領収書等を保管し、税務署に確認することをおすすめします。
Q2: 前職のRSUを売却した場合、どこの会社名を入力する?
A: e-Taxの譲渡所得入力では、売却した証券会社の名称を入力します。取得時と売却時で証券会社が異なる場合は、銘柄名に「AAPL(E*Trade→MS)」などと記載することで、税務署での確認が容易になります。
Q3: Form 1042-Sが1社からしか届かない場合は?
A: 源泉徴収がない場合はForm 1042-Sが発行されません。ある証券会社のみ源泉徴収があった場合、その分のみ外国税額控除の対象となります。
Q4: 転職年に2社から給与があった場合の年末調整は?
A: 12月までに退職・入社した場合、両社で年末調整が行われることがあります。ただし、RSUの権利確定分は翌年1月以降の場合が多く、その場合は自分で確定申告が必要です。
まとめ
複数証券会社のRSUを持つ場合の確定申告のポイント:
| 項目 | まとめ方 |
| 給与所得 | 全社の権利確定分を合算 |
| 譲渡所得 | 売却ごとに個別入力、FIFO方式で取得費計算 |
| 外国税額控除 | Form 1042-Sを全社分集計 |
| 書類管理 | 証券会社別に整理し、管理表を作成 |
重要なポイント:
- 跨ぎ売却でも正しく取得費を計算
- FIFO方式を正しく適用
- 各社のForm 1042-Sを確実に集める
- Excel等で管理することを強く推奨
次のアクション
- 全証券会社の書類を集める
- 権利確定・売却の履歴を時系列で整理
- 跨ぎ売却がある場合は取得費を正確に追跡
- 外国税額控除額を全社分集計
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この記事は2026年3月時点の情報に基づいて作成しています。証券会社のシステムは変更される場合があります。